2023.04.19
歯周病
歯髄炎とは、歯の内部で起きる痛みを伴う炎症のことです。
放置すると重症化し、最悪の場合、抜歯が必要になることもあります。
本記事では、歯科医の立場から歯髄炎の症状や原因、治療方法について詳しく解説します。
Contents
歯髄炎とは、歯の内部にある「歯髄」と呼ばれる組織に起きる炎症のことです。
歯の構造は、外側から「エナメル質」「象牙質」「歯髄」という3層で構成されています。
そして、歯髄には神経や血管が含まれており、歯を生きた状態に保つ重要な役割を担っています。
歯髄炎には、大きく分けて以下の2種類があります。
それでは、2種類の歯髄炎をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
可逆性歯髄炎は、適切な治療により回復が可能な初期段階の歯髄炎です。
主な特徴は、炎症によって毛細血管が膨らんでいるため、冷たいものや温かいものでの一時的な痛みが生じることです。
この段階では歯髄の炎症が軽度で、歯髄を取り除かなくても治療ができます。
不可逆性歯髄炎は、可逆性歯髄炎が進行し、自然治癒が望めない状態です。
可逆性歯髄炎と異なり、持続的な自発痛や夜間痛を伴うことが特徴です。
この段階では歯髄が不可逆的なダメージを受けているため、抜髄と呼ばれる歯髄を除去する治療が必要となります。
歯髄炎の症状には、大きくわけて「急性」と「慢性」の2種類があります。
以下では、急性と慢性のそれぞれ症状を解説します。
急性歯髄炎の特徴的な症状は、激しい自発痛です。
初期状態であれば、冷たいもので一時的に痛みが生じるだけですが、炎症が進むと温かいものでも痛みが生じるようになります。
また、この痛みが夜間に生じて、睡眠を妨げることもあります。
慢性歯髄炎では、急性症状と比べて痛みは穏やかで、痛みを感じない場合もあります。
しかし、虫歯となった歯に刺激が加わった際に、強い痛みを感じることもあります。
痛みは穏やかですが、歯髄が炎症を起こしていることに変わりはないため、早めの治療が推奨されます。
歯髄炎は、以下のようにさまざまな原因によって引き起こされます。
次に、歯髄炎の原因をそれぞれ詳しく解説します。
虫歯が原因で、歯髄炎が起こる場合があります。
これは虫歯によってできた穴から、虫歯菌が歯髄まで進行し、歯髄炎が起きる仕組みです。
また、過去に虫歯の治療で被せ物をしていた場合には、歯と被せ物の隙間から虫歯菌が侵入して、歯髄炎になる場合もあります。
歯周病は歯ぐきの炎症から始まり、進行すると歯根部から歯髄にまで影響を及ぼします。
歯周ポケットが歯周病によって深くなると、細菌が歯根部に侵入し、歯髄炎になることがあります。
食いしばりや歯ぎしりで過度な力が歯にかかると、歯髄に物理的な負担がかかります。
とくに就寝中の歯ぎしりは自覚しにくく、長期間続くことで歯髄に炎症を引き起こす可能性があります。
知覚過敏は象牙質が露出することで起こります。
露出した象牙質を通じて外部からの刺激が直接歯髄に伝わり、炎症を引き起こす可能性があります。
歯への強い衝撃は、歯髄に直接的なダメージを与えることがあります。
転倒や衝突による打撲、スポーツ中の事故などが主な原因です。
外傷を受けた場合、たとえ見た目に異常がなくても、歯髄が損傷している可能性があるため、歯医者で検査することをおすすめします。
歯髄炎はどうやってわかるのかというと、さまざまな検査方法を組み合わせた診断でわかります。
主な検査方法には以下があります。
検査方法 | 内容 |
視診・触診 | 歯の状態を目視と触診で確認する |
打診 | 歯を叩いたときの痛みを確認する |
動揺度検査 | 歯の揺れ具合を確認する |
レントゲン撮影 | レントゲン撮影による内部確認する |
電気歯髄診 | 歯に微弱な電気刺激を与え、反応を確認する |
温度診 | 冷たいものや温かいものを歯にあて、反応を見る |
上記の検査方法から、反応を確認し、歯髄炎なのかが診断されます。
歯髄炎の進行速度は、原因となる虫歯の進行速度から予測できるでしょう。
虫歯は初期状態から歯髄に進行するまでに、約半年かかると言われています。
さらに歯髄まで進行した虫歯が神経まで進行するのは、倍くらいの進行速度です。
そのため、歯髄炎も同様の速度で進行すると考えられます。
歯髄炎の治し方には「歯髄を残す方法」と「歯髄を除去する方法」の2種類があります。
以下では、歯髄炎の2種類の治し方をそれぞれ詳しく解説します。
歯髄炎が初期段階の場合、歯髄を残す方法での治療が可能です。
虫歯や歯周病が原因であれば、それらを治療し、その後に炎症を抑える薬剤を使用します。また、炎症を起こしている部分だけを除去する治療が行われる場合もあります。
歯髄炎によって、何もしていない状態でも激しい痛みを感じる場合には、歯髄を除去する方法で治療します。
歯髄を除去する治療を根管治療と呼び、炎症を起こした歯髄を完全に除去します。
虫歯かもしれないと思いつつ、なかなか歯医者に行けていない方も多いのではないでしょうか。
自覚症状が表れる前に早期発見するのがベストではありますが、歯科を受診する方の多くは痛みが表れていることがほとんどです。
そのため、虫歯に痛みがあっても手遅れということはまったくありません。
痛みが出て間もない時期であれば、それほど進行しておらず、すぐに治療を済ませられるケースがほとんどです。
一方、痛みを放置しておくとどんどん進行してしまい、最悪の場合は抜歯することになってしまいます。
虫歯の治療は、とにかく早い段階で歯科を受診することが大切です。
まずはお気軽にお問い合わせください。